「誰かのためになにかをしたいと思えるのが」

今回は漫画について少し語ります。

何かの作品についてではなく、私の漫画に対するスタンスというか、何を考えて漫画を読んできたかを書いておきたいなと思いました。

 

私が10代の頃は、「漫画を読むと頭が悪くなる」と言われていました。「~は子供をダメにする」シリーズが漫画にあたっていた時代ですね。ゲームとかアニメとか、ターゲットが移り変わっていくだけで、どの時代にも無根拠にやり玉にあげられる対象はあるものですが、中高時代の私はこの文言にカッチーンときておりました。

 

私の漫画読書歴を雑誌を軸にたどりますと、小学校中学年の頃に「りぼん」、中学では購読誌はなく、高校から20代まで「LaLa」「プチフラワー(現flowers)」。高校生の時は「グレープフルーツ」も買ってました。漫画読みの方にはこれでだいたい私の好みをお察しいただけると思います。

「マーガレット」「少女コミック」「少女フレンド」は買ってはいなかったのですが、学校で回し読みしたり、単行本を貸し借りしあったりしていました。

少年漫画は、小学生の頃に流行った「マカロニほうれん荘」と「ストップ!!ひばりくん!」、それから、中学生の時に歯医者さんでちょっとだけ読んだジャンプくらいです。

萩尾望都との出会いは小6、12才の時、クラスメートから「ポーの一族」と「トーマの心臓」を借りて一気に読みました。5月か6月の緑の明るい雨の日に、貸してくれた友達に「面白かった」と感想を言ったのを覚えてます。

 

私が少女漫画を好きなのは、言葉が歌っているからです。描線の魅力は、少女漫画や少年漫画といったジャンルには関係なく好きですが、言葉は少女漫画が一番好きです。言葉使いそのものだけでなく、画面の中の文字の配置が言葉をより膨らませていて、言葉が持つイメージが胸いっぱいに広がって歌うように感じます。

 

そんなことを考えながら私は本気で読んでいたのですが、大人は「漫画を読むと頭が悪くなる」と言うわけですよ。そこで「じゃあ、ちょっと勉強頑張ろう」と思ったんですね。大人が言っている「頭がいい・悪い」は「勉強ができる・できない」程度の意味しかなかろうと思い、だったら、私が多少なりとも勉強ができる子供になることで、漫画を読んだからといって頭が悪くなることなどないと身をもって証明してやる、私の好きな漫画を絶対に否定させない、と思い込んだのですよ。いや、ほんと、思い込みでしかないですが、子供の私は心底怒っておりました。

何が言いたいかというと、私は自分の持てる力は自分の好きなものを守るために使いたい、そのための力をつけたい、とずっと思ってきたのです。その対象が漫画であり、私が一番取りかかりやすかったのが学校の勉強だったというだけです。

そんな子供の思い込みも、大人になってみるとどうでもよかったなと思ったのですが、「自分の力を誰かの何かのために使いたい」という性格の軸は、サービス業に就いて結実したように感じます。仕事を始めてほどなくして気がついたのですが、私はひがな一日机に座っていると鬱屈してしまいます。お客様の生気を浴びながら働いていると自分も生き生きしてくるのを感じます。

最近の流行り言葉(だと私は思っている)承認欲求というのがありますが、私の場合、私が承認されたいのではなく、私が承認したいのですよ。人と接する仕事をしていると、人はひとりひとり違う。それぞれに考え方と行動指針があって、要求も違う。人間は面白い。その人のいいところを私は探し出して伝えたい。あなたはこんなに素敵ですよ、と。

言い方を変えると、愛されるよりも愛したい、あるいは、私たちは殿方に選ばれるのではなく、私たちが殿方を選ぶのです(by 環「はいからさんが通る」)。

 

時代が変わって、漫画もさほど否定されなくなりました。若い漫画家さんが単行本のあとがきなどで「母親にアシスタントをしてもらった」「漫画家になることを両親も応援してくれた」というコメントを書いているのを見ると隔世の感があります。

自分が大人になった今、ちょっとだけ肩の力が抜けて、好きな漫画はただ好きだと言うだけでいいのかもなと思っています。「あさきゆめみし」で葵上が

「人を愛したら どうやってそれを伝えたらいいのか

愛にことばなどいらないのだ

愛したら ただやさしくほほえむだけでいい」

それだけのことがいまやっとわかった、と気がつくところにちょっと似てます。

 

かくも長く深く熱い私の漫画愛。これでもかなり抑えていると言ったらドン引きされるかもしれませんが、漫画については今後もぼちぼち書いていきたいなと思っております。

 

 

 

 

 

今年中にもう一回くらい更新したいのですが、仕事が忙しくてへとへと&くたくたなので、更新できなかったときのために、先にご挨拶をしておきます。

初めての方も、もしかしたら継続して足を運んでくださっている方も、お読みいただきましてありがとうございます。

前にも書きましたが、私の書いたものを読んでくださる方は、おひとりおひとりが私の大切なお客様です。老若男女、有名無名に関係はありません。私の心からの感謝が伝わりますように。来年もここでお待ちしておりますね。

 

では、また。よいお年を。