BUMP OF CHICKENのチケットが取れて嬉しくて予習に余念がない今日この頃です。現ツアーのセットリストやアルバムをランダムに聴いたり、最近のシングルをまとめてシングルオブチキンというプレイリストを作ったり。
いくつか感想をつらつら書いてみます。
「スノースマイル」
東京で雪が降った日にXのトレンドに上がっていたのでじっくり聴きました。
冬が寒くって 本当に良かった
君の冷えた左手を
僕の右ポケットに お招きする為の
この上ない程の 理由になるから
カレカノが歩いている情景から入るのですが、この彼女がちょっと面白いと思いました。
二人で歩くには 少しコツがいる
君の歩幅は狭い
出来るだけ時間をかけて 景色を見ておくよ
振り返る君の居る景色を
最初はこの男性は彼女の遅い歩幅に合わせて一緒に歩くわけではないんだなと思ったのですが、彼女の方も合わせようとしていないと気が付きました。歌を聴いていると「振り返る」の後にちょっと間があるので、彼の方が先を歩いていて、振り返って後から来る彼女を見ていると聞こえたのですが、活字で見ると「振り返る君」なので彼は意図的に遅れて歩いていて前を歩く彼女が振りかえると読めます。いずれにしても並んで歩いてはいないし、歩幅が合わないことを彼だけが意識しているように思います。
この前の段落での彼女の描写は
「雪が降ればいい」と口を尖らせた
思い通りにはいかないさ
落ち葉を蹴飛ばすなよ 今にまた転ぶぞ
何で怒ってるのに 楽しそうなの?
いや、デート中に落ち葉を蹴飛ばすとか何してんの?「また」転ぶって??彼氏に気持ちが行ってないってこと??彼氏が歩くテンポを調節してくれてるんだから自分も合わせる努力をしたらどうなの??無頓着すぎない??
と突っ込みつつも、こういう女性は友人としては嫌いではないです。とても個性的でいいと思う。でも最後は「僕の右ポケットに しまってた思い出は やっぱりしまって歩くよ 君の居ない道を」って一人になってるのでお別れしたんですよね。カレカノだとそうなるよね。
彼の方は「君と出会えて 本当に良かった」と言っているのですが、彼女はこの思い出をどう思っているのだろうかと思います。歌の時点で20代前半くらいのイメージなのですが、別れたからといって泣き崩れるような感じでもないし、自分の世界がしっかりある人だとも思う。ショックではあっただろうけど悲しいとかつらいとかではなくて、
今でも時々思い出す 覚えてる
乾いた道を一緒に歩いた日を
ポケットの中は温かかったけど
するりと抜け出して私は道を逸れた
走って追いかければよかったのか
こっちに来てと言えばよかったのか
わからない
わからないまま私はひとり
ひとりでずっと歩いてきたけれど
今になって気がつくことがある
私の笑顔に意味はなかった
自分がなぜ笑っているのかわかっていたら
違うところにいただろう
そばにいるのがあの人ではないとしても
こんな感じでちょこっと反省してると思いますよ。たぶんね。
次は「メーデー」
最初に聞いた時はライブで盛り上がりそうだなーくらいに楽しく聞いていたのですが、歌詞をよく読んで改めて聴き直して流れるようなストーリー性にびっくりしました。面白い漫画一本読んだような感じ。
君に嫌われた君の 沈黙が聴こえた
君の目の前に居るのに 遠くから聴こえた
発信源を探したら 辿り着いた水溜まり
これが人の心なら 深さなど解らない
この歌い出しで私はニコルをイメージしていて、目の前にいる女の子が黙ったままで何も見えていないような無表情なのでニコルは心配して(どうしたのかな・・)と思っていると、彼女の言葉にならない声が違うところから聞こえた気がして(えっ、どこなんだろう。探してくるからここにいてね、待っててね)と駆け出すんですよ。
走って走ってようやく発信源の水溜まりをみつける。
(ああ、これだ、ここだ。でも・・深いのかな・・どうかな・・でも・・・)
目をつぶってエイッと飛び込むんですよ、人の心の水溜まりに。
(ニコルとはBUMP OF CHICKENのネコのキャラクターです)
息は持つだろうか 深い心の底まで
君が沈めた君を 見つけるまで潜るつもりさ
苦しさと比例して 僕らは近付ける
再び呼吸をする時は 君と一緒に
ニコルはどんどん潜っていって「君」を見つけるんですね。再び呼吸をする時、上に戻る時は一緒だよ、って手を差し出して笑ってくれるんですよ。
「沈黙が聴こえた」「発信源を探した」「辿り着いた水溜まり」この言葉が喚起する場面の流麗な運びが「水溜まり」という体言止めで引き締まるところが美しくてうっとりします。
そして、私がやっぱり藤原さんに聞いてみたいのは「君に嫌われた君」「君が沈めた君」という発想はどこから来たのかということです。これは世代の問題でもあるのか、よく言われる自己肯定感が低いという感覚だと思います。世の中ではいつ頃からか自虐ネタという言葉が流行ったのと関係はあるのでしょうか。バンプより上の世代の歌詞には無いと思うのですが。
ただ、藤原さん自身は水の底でも潜っていけるんですよ。暗い音の無い世界でもどんどん潜っていく強さと明るさがある。そして底にいる人を抱えて上に引っ張り上げる人。衆生を救う人なんだなあと思います。
藤原さんの歌詞にはストーリーがあって絵を描きやすいですね。「スノースマイル」の女の子は白泉社系の漫画をイメージしてモノローグ書いてみました。
いつの間にかBUMP OF CHICKENをすごく好きになっております。そしてなぜか4人とも自分より年上でお兄さんのように感じています。実年齢は息子はさすがに無理だけど弟というには離れすぎているなあというところなんですが、曲を聴いている時は大人のお兄さんたちバンドだと思っています。有明で会えるのが楽しみです。
では、また。