エレカシ35

エレファントカシマシ35周年改めておめでとうございます。諸々感想書いていきます。

 

新曲「No more cry」「Hello. I love you」について

大河のフィナーレ感があるなと思いました。青年期の急流を経て広くゆるやかになった川辺に立つ人の、最後の海に辿りつくまでこの情熱の灯が消えることはないという確信を静かに歌い上げる歌だと思いました。

歌詞で好きなところは、

 

No more cry 浮世にひとり

No more cry 喜び求めて

 

ここなんですが、ひとりの孤独はただ淋しいものではなくなっている。深呼吸して心身にエネルギーを満たしていく時間のような感じがします。

「夢よもう一度 我が胸を焦がして」「この空の下で heartがうたうよ」のように言葉のひとつひとつが優しい。多くを語らずただ音と声が空に広がっていく美しい歌だと思いました。

 

「Hello. I love you」の方は多くのファンが指摘していますが「だが人生は all night long」と逆接の接続詞から始めるところが面白いですね。デビューして35年の来し方を振り返れば、売れなかったり売れたり、ステージで笑ったり怒ったり客に憎まれ口叩いたり、でも今年のアリーナツアーでは自分たちが愛されているとようやくわかってくれたり野音では愛してるぜとようやく言ってくれたり、少し愚かで無謀で、でも最高に輝かしかった日々に4人揃ってくるりと背をむけて前を向いたのが「だが」なんだと思います。だが俺たちはこの先へ行く。世の中よ、日々よ、人々よ、俺たちの I love you を聴いてくれ。これがエレファントカシマシのラブソングなんだなと思う。愛のスケールがでかい。

この後の歌詞は意味がつながらない言葉が羅列されていてとても楽しい。ビックリ箱から言葉がぽんぽん飛び出してくるみたい。そしていつになく英語が多い。違っていたら申し訳ないのですが、イギリスに行った後に作詞しました?英語が耳に入る環境にさらされて、それが歌詞に表れたのではないかと推測しました。全然違ってたらごめんね。

 

 

「No more cry」初回限定のドキュメントDVDについて

4人とも喋っていたのが嬉しかったです。10分でもとても濃くて満足でした。

どのバンドも大抵は誰かひとり(ボーカル率高い)がインタビューを受けていますが、その人の視点で語られることがバンドのすべてではないと思うので、エレカシに限らずバンドメンバー全員に話をしてほしいものです。インタビューに必要な時間、費用、手間暇など実務上の都合が何かあるんだろうなと思いますが、私はエレカシデビュー当時から宮本のインタビューがエレファントカシマシのすべてだとは思っていないので4人万遍なく話が聞きたいです。普段は秘めている「4人を知りたい」という煩悩にこのDVDが着火した感じです。

 

 

10月8日野音について

配信で見ました。アーカイブもくり返し見ました。去年に続き、宮本くんが今ここにいると思いました。遠い明日でも過去でもなく、今ここで歌っている。今年は年相応のおじさんっぽかった。そしてそれがとても素敵だった。

セットリストは繊細でエモーショナルだったと思う。アルバム「Wake Up」からの曲が無かったのも個人的には納得。「Wake Up」の中の「神様俺を」では「迷惑かけないように道の端を歩いています」とか「神様俺を どうか見捨てないで」とか弱々に弱った歌詞があったりするので今のエレカシとはモードが違うと思っています。

野音で歌った「流れ星のやうな人生」にも「神様ぼくを見て」というフレーズがありますが、こちらは「今の自分を信じてみなよ」で締めくくられるので趣が異なります。

1988年渋谷公会堂コンサートを映画館で見た後だったので、35年の年月が気が遠くなるほどにも感じたり、花男の華やかさにあまり変わってもいないかなと思ったり、ほんとになんでこんなにエレファントカシマシが好きなんだろうと幸せな気分になれた野音でした。

 

 

最後にアビーロードスタジオでの「宮本浩次独演会」について

とても素敵なライブでしたが、あの、えーと、私が何を思ったかというと

「この人をおいて先に死ねない」

と思ったんですよね・・。なんでしょう、この感想。さすがに自分でも引きましたね・・。

例えるならば結核を患って入院している妻が足繫くお見舞いにくる夫を見て本当に自分を心配して心労を抱えている姿に申し訳がなくて、泣き虫のあなたが我慢して笑顔を作って私の元を訪れるのがつらい、誰もいないところでは泣いているだろうに私がはかなくなってしまったらこの人はどんなにか苦しむだろう、涙は枯れることを知らずこの人の身を苛むだろう、ああ、私は死んではいけない、この人より先に、この人をおいて死んではいけない、きっと元気にならなくては、この人の涙を拭うのは私しかいないのだから。

という感じですかね。いや大丈夫ですよ、私の頭。自分が受けた印象を創作に変換できる程度には冷静ですので。こういう気持ちにさせる魔性が宮本浩次にはあるということです。

このライブには現地の女性4人のストリングスチームも参加していて、宮本さんが挨拶をしている映像も流れたのですが、宮本さんは ‘ please take care of me ’(僕の面倒をみて) と言ったんですよね。一体なぜこのフレーズを選んだのだ、宮本よ。宮本の個性にぴったりじゃないか。ストリングスのお姉さんたちは思わず笑っていましたが、きっとこのお姉さんたちも「あたしたちが何とかしてあげなきゃ!」と思ったに違いないです。ええ、きっと。なんかもう宮本さんは世界のどこに行っても愛されるだろうなあと確信しました。

宮本さんのインスタで「ロンドン(少しパリ)日記」としてその時の心情を語られています。写真も文章もとても素敵です。(とても素敵ですのでご覧くださいませ、と最初書いたのですが、これも結核の妻気取りっぽく読もうと思ったら読めるか・・と恥ずかしくなって書き直しました)(結核の妻はその後完治しふたりは末永く幸せに暮らしました。どちらが先に旅立ったのかは知りません)(完)

 

 

 

では、また!