パク・ユチョン「Sotsugyou」

パク・ユチョンのアルバム「Slow Dance」(2019年)の中に「Sotsugyou」が収録されています。尾崎豊「卒業」の韓国語カバーです。

私は20代の頃、尾崎豊のファンではありませんでした。その饒舌な歌詞があまり好みではないからです。ヒット曲以外は知らないし、でも、特に嫌いというほどのこともなく、熱狂的な支持を得ている方なんだな、くらいの認識でした。

30代の頃、ふと「15の夜」を耳にしたのですが、その時、「あ、キレイなメロディだったんだな」と気がつきました。私はこの良さがわからなかったんだな、とも思いました。だからといってファンになったわけではありません。とにかく歌詞がしゃべりすぎだからです。これは好みの問題なのでしょうがありません。

今年になって、ユチョンのアルバムで「Sotsugyou」を聞いた時、韓国語なので歌詞が遠くにしか感じられず、やはりメロディはキレイだな、とだけ思いました。

ユチョンはなんでカバーしたのだろうと思ってインタビューを読んでみました。

 

(以下、【独占取材】元東方神起 JYJユチョン 尾崎豊の「卒業」に心震えた理由 

https://news.yahoo.co.jp/byline/kuwahatayuka/20190313-00118091/ より引用)

 

「『卒業』は、すごく難しい曲です。聴いたときは気づかなかったのですが、歌ったら死ぬかと思いました(笑)。6分40秒ぐらいあるんです。尾崎豊さんのライブ映像を何度も見たのですが、ラクに歌ってるんですよね。僕には無理です(笑)。歌詞も多くてラップみたい。聴くのと歌うのでは違いますね。

……でも、個人的にすごく共感しました。歌詞に。今回のアルバムの中で一番歌詞が胸に迫る曲です。本当に。僕は、韓国語で歌っていますが、日本語の意味をできるだけそのまま翻訳した歌詞なんです。すごく共感しました。」

 

「学校に通っていた頃を思い出します。学生時代だからこそ感じる、独特の意地があるじゃないですか。それがすごくよく表現されていて。

卒業してから大学に行ったり、仕事をしたりすることに対する不安な気持ちなど、心を打つ歌詞がちりばめられているんですよね。この曲から、ステージに立つ力をもらいました。

歌いながら癒される曲というのがあります。この曲がまさにそうです。『大丈夫だよ』って。そう言われているような気持になるんです。 」

 

 

このインタビューの中の「ラップみたい」の一言で、私の長年のもやもやが一気に晴れました。尾崎豊はラップ。私が個人的に「饒舌な歌詞」と呼んでいたものは、ラップという見方があったのか。なるほど。

私は、まだラップの歌詞というものを測りかねているんですよ。k-popでしかラップをちゃんと聞いたことがなく、英米のものはほとんど知りません。まずは聴き倒して経験値を積むしかないとは思うのですが、無理やり聞いても楽しくないので、まあ、聞きたくなった時に聞くか、くらいで現在に至ります。

なので、これはざくっとした直観でしかないのですが、尾崎豊が支持を得たのは、やはり日本語が映えていたから。日本語の抑揚で語り歌ったことによって、歌の内容をよりリアルに日本語話者に伝えることができた。

ユチョンは、今の世の中の空気の中で「卒業」を聞き、「これはラップだ」という受け止め方をした。通訳なしでインタビューができるほど日本語が流暢なユチョンは、日本語の抑揚の美点も感じとっていたのではないか。

 

k-popをご存知ない方のために少し説明しますと、パク・ユチョンは、元東方神起で元JYJ、ドラマにもよく出ています。が、現在は事務所との契約を解除され、事実上の引退状態。麻薬類管理法違反のためです。やってはいけないことをやってはダメですよね。でも、この感性と歌声と演技力が今後ずっと眠ったままなのかと思うと、胸がふたがれる思いです。

ユチョンにはありがとうと言いたいです。ヒントをくれてありがとう。歌もドラマも楽しませてもらった。どんなあなたでも私がファンであることには変わりはない。いつか韓国社会に許されてステージに戻れる日が来ることを祈ってます。