クレーム対応の心得

世の中クレームが増えているようですね。パンデミックで人心が荒れているんですね。

お役に立てるかわかりませんが、私はサービス業に従事して約30年、イコール、クレームと戦ってきた年月ですので、対処法を書いておきます。ネットで具体的な仕事の話などできませんので抽象化することはご了承ください。

 

まず、なんか文句言ってきたら「この人は本当は何が言いたいのだろう」と検討します。なぜならば、世の中のすべての人が自分の言いたいことを上手に言えるとは限らないからです。不安をぶつけているだけだったり、相手が悪いわけではないとわかっているが八つ当たりがしたい、単に話を聞いてほしい、クレームをつけているつもりはなく口調が乱暴なだけ等々、よく見極めることが肝要です。

相手の望みはこれかな、と当たりがついたら、謝るべきことは率直に謝り、できることとできないことを明確に伝え、こういう形で対応させてほしい、と提案してみます。

ここで平謝りすることにはあまり意味がありませんが、謝っただけで溜飲が下がって大人しくなる方もいるので、そういう相手にはさっさと謝りましょう。でも、謝罪で終わりではありません。仕事は情緒ではないので、謝った先に何を相手に提供できるかを伝えます。

やりとりをしながら反応を探っていきますが、相手の要望にどうしても対応できない場合は、できないと言い通します。ここで更に怒ろうがなんだろうが、できないことはできません。

これらの対応の軸は「誠心誠意」「嘘はつかない」というところでしょうか。虚偽や不善は必ず負けます。真実と善意が最大の武器です。

心をこめてお話を伺っても相手が無理難題を言い続けるようなら、思い切ってケンカしてもいいと思います。いいんですよ、こちらも人間なんですから、いつまでも我慢して理性的に対応できるとは限りません。

お客様に怒鳴り返した結果、訴えるぞ、とか、SNSで拡散するぞ、とか言われても、わかりました、って言いましょう。本当に訴えてくれたら法的に解決できます。SNSで拡散すると宣言してくれたなら、犯人がその人だと特定できるので警察に届けましょう。

ごくまれに、本当に大事なクレームを言ってくださる方がいます。こちらが間違っていたり不十分だったりしたことを怒らずに伝えてくださり、今後ともよろしくお願いしたいからお話しました、などと言われると、ああ、この人、うわ手だ、と心からお詫びしつつ、今度この手を使わせてもらおうと思ったりします。

そして一番大事なのは、「客とケンカしても最後は責任取ってやるから心配するな」と言ってくれる上司の存在です。こういう上司がいる職場は社員がクレームから立ち直りやすいと思います。

 

職種によってクレームも違ってくると思いますが、真正面から受け止め過ぎないことと、これは仕事上のことであり個人的に言われたわけではない、とどこかで見切ることが大事かなと思います。

 

そんなにクレームが大変なら転職すればいいのに、と思うかもしれません。転職した方がいい人もいると思います。でも、長年勤めている中で、クレームをつけてきた人がやりとりをするうちに怒りがほどけて、最後はお礼を言われることもあります。口汚い言葉を残して去った相手が数年後に低姿勢で現れることもあります。人間は現金だな!と思いますが、そういうお客様仕事の醍醐味を知ると、クレームは仕事全体のほんの一部に過ぎないこともわかってきます。

今、このたいへんな状況でクレーム対応をせざるをえない方々にそっと小さなエールを送ります。疲れていると思うので大声は出したくありません。できれば黙って熱いお茶を入れてあげたいところです。お互い大変だけど、あなたも私もまったく悪くない。時々現れる優しいお客様と仲良くして息継ぎしましょう。

クレームをつける方々には己の暴言を心底恥じ入る瞬間が訪れますように、と天使の心で祈っておきます。