スライダーズ武道館の私的記録です。
「ロックコンサートにおける手拍子問題」スライダーズでも検証しました。そもそもこの話題を初めて知ったのは若い頃に聞いたラジオで蘭丸さんが話していたからです。私の中にこのテーマを植え付けたのはスライダーズなのでやらいでかという感じで臨みました。
結果、どうでもよかったかな。スライダーズファンの年齢増は高く、そしておそらく洋楽ファンとかなり被っていると推測。今更不似合いな手拍子が起こるわけもないです。
手拍子をしながら聴く音楽でもないように思うんですよね。お酒飲みながら聴きたいなーと前半は思っていました。私は赤ワインを飲むと脳みそにじゅわっと染み込むようなイメージを描くのですが、ハリーさんの声も同じような効果があるんですよ。脳みそにダイレクトに響く声。
歌詞について改めて書いておくと、ハリー兄さんの歌詞はたいてい横に流れていきます。
「凍りついた 駅に降りて
おまえのいる街まで
通り過ぎた 背中に今
流れる風を知った」(one day)
「ありったけコインかきあつめて
のんだくれオマエとどこへ行こう
見も知らぬ街まで飛ばそうか
行き交う車を目で追いながら
通いなれた店でグラス片手さ」(ありったけのコイン)
「道化師たちが 化粧を落として
パントマイムで どこかへ抜け出した
そんなことどうでも いいことだったのに
baby のら犬にさえなれないぜ」(のら犬にさえなれない)
「おまえしだいさ 西でも東でも
どこへ行こうと
吹き荒れる嵐の中」(風の街に生まれ)
「通り過ぎた」「流れる風」「行き交う車」景色が横に流れる言葉の数々。「道化師のパントマイム」も横に移動していくマイム。「西でも東でも」南北だと上下になりますが、東西だと右左のイメージ。スライダーズは地に足をつけて世の中と平行移動する。
ペイズリー柄と逆立つ髪の毛が若き日のハリーさんの象徴的なビジュアルでしたが、私は「きみはロックを聴かない」と自称する人間でしたので、この外見には若干抵抗がありました。でもその柄に柄を合わせた服装でずるずる歩いてマイクの前に立った青年の口から出てくる言葉は内省的な文学青年そのものの詩であり、その端正さに私は心底魅了されました。ロックを聴かない私がずっとロックというジャンルの音楽を聴き続けているのはこういう宝石が至る所にあるからだろうと思っています。武道館で約30年振りに聴いても研ぎ澄まされた言葉の輝きは変わらず、魂が潤う思いでした。
「風の街に生まれ」では、「西でも東でも」のところで思わず一緒に歌いそうになりました。私はコンサートで自分が歌うなど基本無いのですが、自然に歌いたくなるほど体の力が抜けた楽しく幸せな空間でした。
スライダーズ兄さんたち、ありがとうございました。ファンと一緒に健康で長生きしてください。そしてまた素敵な音楽を聴かせてくださいませ。
ではまた。