映画館で映画を見るということ

今回はちょっと厳しい話です。映画関係者による性暴力が問題化されて改善に向けての努力も報じられていますが、映画館での痴漢撲滅も合わせて考えてもらえないかと思います。

私は20代前半に映画館で痴漢にたびたび遭遇したため、以降、映画館に行くのはやめました。例外的に行ったのは友人と一緒だった時に2回、どうしても見たかった映画2本、数十年間でこれだけです。DVDや配信サービスでは見ますが、映画館は私の人生とは縁のない場所となっています。

特に困りはしませんし、悲壮な決意の元での話でもなく、身の安全を優先しただけのことではありますが、痴漢被害によって選ぶ道が変わったとは思います。

太ももを触るんですよ。映画を見ていると、さわっとわからないくらいの触れ方で、でも触っている。

まず、体が硬直します。のどが詰まって声が出せません。怖くて、死の恐怖も感じるのですが、自分の置かれた状態がわからないというか、判断を奪われる感じです。

が、私はその無のような状態からだんだんと怒りが腹の底から湧き上がってきて、なんでこんなことをされないといけないの、と考えられるところまで来ると、弱弱しい力で自分のバッグを相手の手の上に乗せて、「あの!」とか「ちょっと!」とか、これまた悔しいくらい力の無い声で抵抗します。とにかく力が出ません。でも腹の中は怒りのマグマがたぎっています。

この弱弱しい抵抗でも抵抗には違いなく、ここでほぼ痴漢はバタバタと去っていきます。1人だけふっと笑った痴漢がいて、あたかも「やれやれバレたか」とでも言いたげな反応に犯罪の自覚が無いと感じ、私の方が席を立ちました。

映画館だけでなく、普通に道を歩いていても痴漢に遭遇しました。

後ろから自転車で来て通りすがりに胸をさわる、やはり後ろから忍び寄ってお尻を触る、電車の中では隣に座った男性に太ももを触られる、本屋さんで後ろから体を摺り寄せてくる。

こういう犯罪が普通の道で、街中で行われています。被害経験のある人は外出時には常に緊張を伴う防衛体制下にあるということです。

私は心情的には痴漢はその場で有志によって撲殺してよいという法律があっても納得いきますが、そんな野蛮な世の中でも困りますので、今回、映画関係者が改善のメッセージを打ち出したように、映画館や電車の中などいつでもどこでも痴漢は絶対に許されない犯罪だというメッセージを関係各所が出し続けてくれることを望みます。

韓国芸能界で、kpopスター数人が性加害動画を共有したことで事務所から契約解除になった事件がありました。直接女性の体に被害を与えるだけが加害ではないということも周知される必要はあります。写真や動画を拡散することも非人道的な性加害であるので、そういうものの共有に誘われた人が頑として拒絶することも加害防止の一助になります。できれば通報してください。

被害者は被害を受けたショックや苦しみの次に、「誰も助けてはくれなかった」「正義の味方などいなかった」という絶望とも戦わないといけないので、犯罪の共有を拒絶する人、通報する人がいると知るだけでも若干救いになります。

最後に、こういう話題ほど声高にならないように意図して書いています。怒りの感情を言葉に乗せてしまうと人は耳を塞いでしまい、伝えたいことが伝わらないと考えるからです。感情に流されず、被害者意識に陥らず、煽ることもせず、忍耐をもって自分の考えを伝える努力を続けたいと思っています。