愛しているよと歌うひと

今回は宮本のおじさんのお話です。

NHKのドラマ「ディア・ペイシェント」の主題歌「P.S. I love you」を宮本さんがお歌いになっていますが、タイトルが発表された時点で「はっ?ピーエスアイラブユー??」と虚をつかれたというか、最近の宮本くんの言葉選びにビックリしております。

エレカシをあまりご存知ない方のために、若い頃の曲名を挙げておきますと、「浮き草」「曙光」「偶成」「遁世」等々、無口な文学青年のようなラインナップあり、「てって」「デーデ」「サラリ サラ サラリ」「うつらうつら」といった表音優先・若干意味不明のタイトルもあり。ファンはもちろんそこが好きでファンなんですが、50を過ぎてからの「きみに会いたい」「旅に出ようぜ baby」「P.S. I love you」という率直なタイトルを見ると「宮本様、どうなさいました・・・?」と思わずにはいられないといいますか。

「P.S. I love you」のサビのところも

 

I love you I love you 悲しみの向こう

立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界

I love you I love you いつまでも輝きもとめて

ああ 愛してるぜ 日々を P.S. I love you

 

 

といたってシンプルです。が、ところどころに散りばめられた珠玉のフレーズがあって

 

 

雨の日傘をさすように 歩いていこう

ゆこう ゆこう 大人の本気で さあ 立ち上がろう

 

 

これが「雨の日には傘をさして」だと、雨の日限定の話になるところですが、「雨の日傘をさすように」人生にはいろんなことが降りかかるけど、傘をさして雨をよけながらでも外に出かけていくように、人生も先に進めよう、と歌っているのだと思います。

 

 

愛って何だかわかった日が きっと新たな誕生日

出会いと別れ ああ 人生を経て 宝物を手に入れたのさ

悲しみの歴史それが 人の歴史だとしても

ああ ひとつぶのナミダのその向こうに きみの笑顔を見つけた

 

 

エレカシの「悲しみの果て」(1996年)では

 

 

悲しみの果てに

何があるかなんて

俺は知らない

見たこともない

ただ あなたの顔が

浮かんで消えるだろう

 

涙のあとには

笑いがあるはずさ

誰かが言ってた

本当なんだろう

いつもの俺を

笑っちまうんだろう

 

悲しみの果てに

何があるかなんて

悲しみの果ては

素晴らしい日々を

送っていこうぜ

 

 

悲しみの果て、その向こうには何があるか知らないと歌っていたんですよね。知らないし見たこともないし、誰かが言っていた伝聞でしかなかった。素晴らしい日々を送っていきたいと望むのが精一杯の青年期。NHKの「ライブ・エール」で、ライブハウスでこの歌をうたう当時の映像が流れましたが、まだレコード会社も決まっていなくて、人生の先が見えないまま三十路を迎える頃の歌。

それが今や人生を経て「宝物を手に入れた」、涙の向こうに「君の笑顔を見つけた」、「愛してるぜ 日々を」と歌う宮本くんは、若い頃に希求していた素晴らしい日々を生きているのだと思います。今の宮本くんの成熟と実感を表現するのに、日々を、世界を、きみを愛してる、I love you、この言葉以上に言うべきことはないように思います。

そして更に「ゆこう ゆこう」と歌っている宮本くんは、エレファントカシマシは、この先どんなところに行くのだろうとわくわくしています。「大人の旅路は着の身着のままがいい」んだそうです。

ゆく先々で見たこと聞いたことを歌にして届けてくださいね。エレカシの歌を聴くことで私も旅路の友になりたいと思っています。

 

 

 

 

ではまた。