そこは天使が住まう街

宮本さんソロの新曲「解き放て、我らが新時代」をぐるぐる聴いております。かっこいいですよね、この宮本様。でも、やっぱり歌詞にさらっと「涙」って出てくるんだな、とも思っております。涙か。泣いてると見過ごせないんだよ、余計なお世話だってわかってるけど。無理に話せとは言わないけどさ、オレはいつでもおまえの味方だからな、と私の中の男気が引っぱり出されます。

 

が、今回はこの新曲の掘り下げではなく、エレカシワールドにおける「宮本タウン」について書きたいと思います。

宮本さんは歌詞の中でよく街を彷徨されます。「今宵の月のように」(1997年)が一番なじみがありますね。

 

 

夕暮れ過ぎて きらめく町の灯りは

悲しい色に 染まって揺れた

君がいつかくれた 思い出のかけら集めて

真夏の夜空 ひとり見上げた

 

 

ひとりの青年が孤独を抱えて歩いているのだと思います。でも、町の灯りはきらめいているので、世の中はさびれてはいない。寒風吹きすさぶような荒れた町では決してない。

 

 

ポケットに手を つっこんで歩く

いつかの電車に乗って いつかの町まで

君のおもかげ きらりと光る 夜空に

涙も出ない 声も聞こえない

 

 

宮本さんの涙には二通りあって、たいていは流れる涙なのですが、本当に悲しくて流れない涙があります。いつか君といた町に来ても君はもういない。町は変わっていないのに、自分はあの時と違ってひとり歩いている、のだと思います。

 

 

明日もまたどこへ行く

愛を探しに行こう

見慣れてる町の空に

輝く月一つ

 

 

町は見慣れた町。見知らぬ町で孤独なのではなく、見慣れたいつものいつかの町。宮本さんの歌詞世界の「街」は「ホーム」なんだろうなと思います。

 

アルバム「MASTERPIECE」に「飛べない俺」という曲があります。(2012年)

短いので歌詞全部載せます。

 

 

何処まで行っても飛べない俺が

雨の中今日も探してる

 

確かに感じる この世の中には

心ふるわせる 明日がある

 

いつか大人になってた俺が

ある日立ちどまり空を見る

 

確かに感じる 輝く瞬間(とき)を

そうさ俺は今生きている

 

俺の魂がしみ込む街

風が吹きわたり雨は上がったけど

 

何処まで行っても飛べない俺を

お天道様が笑ってる

 

 

十数年を経て、街は「俺の魂がしみ込む街」になったんですね。私はこのフレーズを聞いた時、息がつまって、とてつもない包容力を感じました。ここで宮本さんは上から街を俯瞰していると思うんです。慈しむように街をかき抱いているような気がします。

なので、飛べないと言ってはいても、地面に立っているのではなく、木の上かビルの上にいて、空を見上げては飛べないなと思い、街を見下ろしては、自分の魂が宿るほどに深い愛情を注いでいる。

かつてあたたかな街に守られてさまよっていた孤独な青年が、今や街を愛する側になるまでに成熟したことが、この静かな歌から伝わってきます。

 

アルバム「Wake Up」(2018年)の中の「神様俺を」も好きな曲なんですけど、

 

 

いつの間にか私は歳を重ねて 空はあんなに青い

光はあふれてるのに

 

楽しげに歌えば風にかき消されちまった

迷惑かけないように道の端を歩いています

 

神様俺を見て

いつか深い皺が顔に刻まれし永遠の少年を

神様俺を どうか見捨てないで

祈りを捧げるから 明日を歩むから

 

 

このおじいちゃんみはなんでしょうか、宮本様。年を取っても歩行するのはいいんだけど、道の端っこ歩くにはちょっと早過ぎやしませんか。

そして、初めてじゃないでしょうか、こういう泣き言を歌うのは。宮本さんて基本的に歌詞の中に愚痴や泣き言が出てこないんですよ。そこもすごく魅かれるところなんですけど、グズグズ甘えたことを言う前に、一旦、口を結んで言いたいことを飲みこんで、「俺は今日もメシ喰って出かけるぜ」(Easy Go)と外に出るような感じがします。

また、見捨てないで、って甘える相手は神様なんですよね。うーん。なんでここ女の人じゃないんだろ。女性に甘えるという発想をしない方なんでしょうか。や、まあ、いいんだけど、最初の話に戻るけどさ、オレでよかったら肩貸すくらいはするからさ、あんまり我慢するなよ、いつでも聞くよ、おまえの話ならなんでもな。と、やはり私の男気が発動されるのでした。ていうか、なんで私も乙女ゴコロが微動だにしないのでしょうかね。街を見下ろして神様に祈る宮本くんは天使だから?でしょうか。